海辺の自然再生高校生サミット

本サミットの趣旨

アマモは、日本各地の砂泥に生息する海草の一種で、その群落によって形成されるアマモ場は「海のゆりかご」といわれるように魚の産卵や稚魚の成育の場として重要でした。しかし、経済成長に伴う沿岸海域の開発などにより、アマモ場は急速に失われました。近年、各地でアマモ場の再生活動が行われるようになりましたが、今後もさらなる活動の推進が必要です。また、アマモ場に限らず、海辺の自然再生には、藻場・干潟・サンゴ礁など、その地の生態系に応じて、自然・社会両方の側面からの多様な試みが必要です。
本サミットは、海辺の自然再生に取り組む高校生が日頃の活動や研究成果を発表し、意見交換を行う場です。積極的な交流によって日頃の活動や研究の大切さを再認識すること、また、お互いの取り組みを比較することにより、新たな知恵やアイデアが生まれることを期待しています。

海辺の自然再生・
高校生サミットの歩み

海辺の自然再生・高校生サミットは、高校生による活動発表と意見交換の場です。 全国アマモサミット第5回大会を、福井県立小浜水産高等学校(現・若狭高等学校)で開催したことをきっかけに、第6回大会より全国アマモサミットのプログラムの一部として毎年、開催しています。
高校生は、同サミットへの参加を通して、お互いの活動を学びあい、また、専門家からの助言を得ながら、意見交換を行います。それぞれの活動の質を高め、全国の仲間とのネットワークを広げるために、ぜひ、ご参加ください。

全国アマモサミットとは

全国アマモサミットは、「アマモ」と「アマモ場」を象徴的なキーワードとして、海の自然再生・保全を目指して、2008 年より開催しています。全国各地の海とその沿岸地域が抱える課題をテーマに、市民、地域団体、行政、研究機関、小・中・高校生などによる活動紹介や研究発表、意見交換を行ってきました。

これまでの開催地

※2020年は新型コロナウィルス感染症の拡大により開催中止

  • 2008年神奈川県横浜市
  • 2009年鳥取県米子市
  • 2010年鹿児島県指宿市
  • 2011年大阪府大阪市
  • 2012年福井県小浜市
  • 2013年宮城県塩竃市
  • 2014年青森県青森市
  • 2015年熊本県八代市
  • 2016年岡山県備前市
  • 2017年三重県志摩市
  • 2018年大阪府阪南市
  • 2019年宮城県塩竃市
  • 2020年福岡県福岡市※
  • 2021年青森県青森市
  • 2022年千葉県館山市

各校の活動の様子

北海道・東北エリア

北海道霧多布高等学校

私たち北海道霧多布高等学校は北海道の東、釧路市よりもさらに東に位置しており昆布をはじめとした漁業が盛んな浜中町の高校です。日々の営みの中でアマモが身近な街であり、本校では2015年より外部より講師の方をお招きし、アマモについての知識を深めアマモ場のモニタリング活動を行ってきました。私達生徒は2015年から受け継いできたこの活動を後輩達へと受け継いでいきたいです。

北海道小樽水産高等学校

私たちは小樽水産高校古平栽培漁業実習場のある古平町でアマモの調査活動と再生活動を行っています。アマモ場を再生することで、古平町の水産資源量が回復できると考えています。活動はスクーバダイビングで行っています。そのためCカードや潜水士の資格取得もがんばっています。またアマモ場を守るための海岸清掃活動も続けて行っています。

北海道函館水産高等学校

私たちはアマモの調査活動として、カヌーによるモニタリングを行っています。今年はGPS を携行することで、大まかな面積を測定することができました。 また、アマモの減少が、水質の変化によるものである可能性を考え、上流の川から海までのCOD を測定する調査を行いました。アマモ場を守るための海岸清掃活動も続けて行っています。

青森県立青森工業高等学校

青森県の陸奥湾は皆さんがご存知のように、全国でも有数のアマモ場が広がっており、私たちもその海の恩恵を受けています。近年、そのアマモ場が減少しつつある中、企業や漁協の方々に協力してもらいながら、共にアマモ場の維持・造成のために、竜宮礁を野内地先に設置するなど様々な取り組みを行っています。

山形県立加茂水産高等学校

本校は藻場保全と造成を、漁業者、鶴岡市、山形県水産研究所と共におこなってきました。そこでは、食害生物駆除と並行して、独自に藻場のモニタリング技術の向上に取り組んできました。令和元年度にドローンを導入したことで、空撮によるモニタリングで表現の幅が広がり、現在も技術の向上に努めています。

宮城県水産高等学校

緊急事態宣言解除後に通常の学習内容が始まりました。本校海洋総合科、生物環境類型が主に実習を行っている栽培実習場前の万石浦(狭い水路で太平洋とつながっている内湾)を中心として、陸上および海上からアマモ等の生息場所等を確認しています。現在は陸上から、今後は海上(小型船)から水中写真を撮影しながら確認していくことを続けていきます。

関東・中部エリア

静岡県立焼津水産高校

静岡県立焼津水産高校では、漁業者に嫌われていた海藻「アカモク」に着目し、地域産業の活性化に貢献できるよう、公官庁・漁業者・商店との協働による幅広い活動を実施しています。また、廃棄されている「漁網」を使用した学校オリジナル商品を開発し、大阪万博での展示や全国・海外での販売を目指す活動など、地域に求められる水産高校の役割を果たすべく、奮闘しています。SDGs普及活動も積極的に行っています。今年の高校生サミットに初めて参加し、活動をご紹介しますので、よろしくお願いいたします。

千葉県立館山総合高等学校

私たち館山総合高等学校海洋科では、NPO法人たてやま海辺の鑑定団様の御指導を頂きながら、アマモの再生活動に取り組んでいます。また、館山水産事務所からの要請を受け、磯焼けの被害が大きい岩井地域のガンガゼの駆除にも取組み、今年で3年になります。このような海洋環境の変化はスクーバダイビングの実習で館山湾に潜る度、ひしひしと感じられます。今年度は、館山湾、鷹ノ島周辺に見られる温暖化指標生物や海水温の長期的変化等について、課題研究の授業で取り組んでいます。

千葉県立安房高等学校

2014年頃より千葉県館山市沖ノ島のアマモ場は年々減少していました。原因は特定できていませんが、海だけでなく陸環境の変化の影響も考えています。さらに2019年の台風によりアマモは完全に消失してしまいました。そこで私たちはNPO法人海辺の鑑定団さんと共に、海と陸のつながりを意識したアマモ場の再生を試みています。また、環境保全活動を行いながら、現状認識のための基礎調査として魚類調査も始めました。

神奈川県立海洋科学高等学校

本校で行ったカワハギの種苗生産の過程で、カワハギ同士の噛み合い防止のため擬海藻を設置したところ、噛み合いを防ぐ他、寝床や隠れ家として利用していました。これらから、海藻は自然界の中で重要な役割があると改めて分かりました。しかし近年は磯焼けにより、生態系に影響が出ています。そこで、本校では磯焼け対策も行っています。

福井県立若狭高等学校

平成16 年より先輩たちの意見から、かつて湾内に群生していたアマモを再生する活動を始めまました。 具体的には、定植活動や研究活動、啓発活動を行ってきました。今年度の取り組みとしては、先輩方が育てたアマモを水槽から海に移植しました。今後は、定期的に移植したアマモを経過観察します。そして、アマモで地域の環境改善に取り組んでいきたいです。

近畿・中国エリア

京都府立海洋高等学校

10 年前より日本三景「天橋立」に隣接する、阿蘇海でアマモ場調査を行っています。 阿蘇海では、富栄養化が問題となっているため水質浄化を目的に、アマモ場造成研究を行っています。 昨年度より月1回潜水による定点観測を行い、新たな発見がありました。それは、湧水です。今後湧水とアマモの成長の関係を調べていきます。

関西大学北陽高等学校

2017 年度より、アマモ場再生活動と異校種間連携プログラムの構築に挑戦しています。また、2019 年度からは保健の授業内で海洋問題が様々な環境問題と繋がっていることを理解し、SDGs14「海の豊かさを守ろう」の目標を達成するために、『100年後の海へ、わたしたちにできること』を探求しています。

兵庫県立西宮今津高等学校

昨年度「フィールド科学実習」に参加して、甲子園浜と京都の海との明らかな差を体感しました。そこで、この黒く濁った甲子園浜を豊かな海にするため、「アマモを甲子園浜に植える」という将来的な目標を立て、甲子園浜の砂でのアマモの発芽率を調べる実 験を行いました。

岡山学芸館高等学校

里海の聖地と呼ばれる岡山県備前市日生町で、2017年から海洋研究に取り組んでいます。1 年次にアマモ場再生活動や聞き書きに取り組み、2 年次で牡蠣養殖体験や海洋教材作成、干潟をフィールドとした課題研究を行っています。先輩たちの基礎研究を引き継ぎながら、優占種ウミニナの季節動態評価や、アマモ実生苗の緑葉展開に関する研究に取り組んでいます。

三重高等学校

私達は10 年以上、月1回の松名瀬干潟での生物相調査や上流の森林調査、そのデータを用いた地元の方々への観察会や学会発表を行ってきました。最近では、活動を広げるべく、興味のある新入部員を増やすことと、地元の方々に海をより知ってもらうため松坂木綿( 海が豊かで干鰯が多く作られ、良質の綿を生産)の栽培実験を行っています。

九州エリア

福岡県立山門高等学校

当校では、福岡県立伝習館高校のウナギ研究を引き継いで、飯江川をニホンウナギのサンクチュアリにするために必要な「広葉樹の森づくり」を行っています。飯江川上流は竹林が拡大し、その影響もあって飯江川には魚道が整備されていない可動堰が至る所に作られています。可動堰が必要なくなるためには、上流の森の吸水力が大きくなる必要があります。地域の子供たちのためにも活動を頑張ります!今年初めて高校生サミットに参加しますので、よろしくお願いいたします。

福岡県立伝習館高等学校

私たちは2015 年から、江戸時代に上水道として人がつくった環境である柳川掘割をニホンウナギのサンクチュアリにするための特別採捕と生態実験・標識放流を行っています。また、2020 年から自然の川である飯江川の護岸や堰の構造を見直すことで、飯江川をニホンウナギが育つ川にするというゴールに向かって進み続けています。

福岡工業大学附属城東高等学校

私たちは城東高校の近くにある和白干潟を中心に活動しています。ここでは、周辺に住む小・中学生を対象に干潟観察を行い、環境保全意識の向上を図りました。また、研究として博多湾内のアマモが生えている場所の現地調査やアマモの発芽条件の模索、およびより良い移植場所の検討を行いました。

エコユースやつしろ

「エコユースやつしろ」は、母体を「次世代のためにがんばろ会」として、「故郷を知り、守る。繋ごう、次の世代へ」をモットーに、熊本県八代市内の高校生対象に2021年7月に発足しました。八代市内の700人の高校生が参加する「八代海河川・浜辺の大そうじ大会」への参加や、不法投棄の撲滅に向けた啓発活動など、八代海再生に向けた取り組みを行っています。八代海・我が地域の魅力を誇りに思い、メンバーがそのまた次の世代に伝授できるよう精進中です。

熊本県立芦北高等学校

本校では19 年間アマモ場造成に取り組んでいます。 これまで、様々な播種法や移植法に取り組み、活動当初0.25haだったアマモ場は、令和2 年6 月には7.5haまで拡大していました。しかし、昨年7 月に発生した熊本豪雨災害により約5haが消失する被害を受けました。現在、再復活を目指して取り組んでいます。

鹿児島県立鹿児島水産高等学校

当校では、南さつま市役所や地元の漁協からお声掛けいただき,昨年度より藻場造成の活動に取り組み始めました。狭い施設でも効率よく種子が採れる方法や,発芽率の良い条件を研究し,発芽したアマモを地元の海に植えています。地域と連携し,情報を発信することで藻場再生の取組が鹿児島件全域に広がるよう,日々活動しています。今年、高校生サミットに初参加し、活動をご紹介します!

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